「ある子供」

<データ>(飯田橋ギンレイホールwebより)
2005年 フランス映画 1時間35分
監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:ジェレミー・レニエ、デボラ・フランソワ、ジェレミー・スガール
配給:ビターズ・エンド
盗みを働き、その日暮しをしている20歳のブリュノと18歳の恋人ソニア。ある日2人の間に子供が生まれたが、その子を売ってしまうブリュノ…。涙も、働く汗も、本当の愛も、命の重ささえ「知らない」ブリュノ。辛い、むき出しの現実の中にも命(希望)が息づいていることを証明したダルデンヌ兄弟の傑作!!



評価の高いこの作品、でもロードショーの予告を観た時点で、あんまり私向きではないかもとの予感がして、観ていなかった。そしたらココでやっていたので、観てみた。
予感は的中。この手の映画、私にはうまく入ってこないのです。これが現在の現実、と言われれば、ごもっとも、と言うしかないのだが、しかししかししかし。映画ですからね、メディアは。映画ですから。

まず、予告を観てごく単純にひっかかったのが、ジェレミー・レニエという男が若く見えない!!ってこと。何歳の設定かは知らなかったけれど(まさか二十歳とはっ!!)、30過ぎくらいに見えるのよ。法令線とかくっきり刻まれちゃってるし、笑顔も疲れてるし、脚短いし(って、それは関係ないか)、髪の毛もほわほわだし・・・と書きつつ思ったのだが、二十歳なのにこんなに老けちゃうくらいの生活をしてる男なのだよ、ということなの? うーむむ、しかしそれにしても老けてるよ。女の子は10代に見えるのにね。
なので、主人公にあまりひかれず、ストーリーは苦手っぽく、美しいの視点が違う気がして観なかったわけですが。

ちゃんと映画が始まっていろんな表情みても、やっぱり30前後の男に見えちゃうよねー。だからやってることのバカさ加減がより情けなく見えるというか。
なぜ一応アパートの部屋を借りて暮らしていけるくらいの女の子が、川原にすんでる特別男前でもない男に魅かれてつきあってるのかが、私にはよくわからない。バカ騒ぎの仕方もハンパだし、ノワールに憧れて、って言いたくてもちっともノワールじゃないし、優しいっちゃあ優しいのかもしれないけど、弱い優しさに見えちゃうし(いやそれは私の年齢からみれば、か。10代の目で見れば、充分優しいか、そうかそうか)。

で、まあ男が盗品や中古品を売るごとく自分たちの赤ん坊を売り、彼女に心底あきれられてハッとして、慌てて買い戻しに走る。それでも彼女の怒りは納まらず、生まれ変わるよと言ったそばから許してもらえないからと近所のチビとかっぱらいをし、チビが警察に捕まったのをもらい受けに行って自白し、自分が牢屋に入ってそこに彼女が面会にくる・・・って、わかんねー。それが希望の光なのかねえ。こういう男って、何度も生まれ変わると言っては同じようなことをしでかして泣いて、また許してもらって生まれ変わると言っては同じようなことをして泣いて、の繰り返しだと思うんだけど。5回許せば本気で立ち直るの? 10回許せば、本当に生まれ変わってどうにかなるの? 母親のように何回でも何回でも何をしても女が許してくれなきゃ生きていけないの? はい?

というわけで、私にはあまり好ましいとは言えない映画でございました。男の気分は描かれてると思うけどね。男の目線は活かされてると思うけどね。しかも現実に、自分の子供を売るまではいかないにしろ近いことをする親が増えてるようだし、売るほうがマシなくらいのことしてる親もどんどん増えてるようだし、それで少子化対策とか言われても、という気がしないでもないし、じゃあお前はきちんと大人になってるのかと言われるとなってないわけだし・・・。

ああ世の中おかしくなってるよ、と思うことはニュースを見ずとも増えているのはわかるわけで、いろんな意味で(骨格の変化なども含め)生物として人間はそろそろ限界迎えてるのではないかねえ、と思うのではあった。