シベリア少女鉄道「ここでキスして。」

曇りや雨の日が続く。晴れの日も巡ってきてくれないと、気持ちがどうにもこうにも・・・。
とか言いつつ、お雛さま。実家では、まだ私が大好きな、私が生まれたときに母方の祖父母が大喜びして買ってくれたというお雛さまを飾ってくれているだろうか。と、聞くのも心苦しくて、そっとそっと日を過ごしていたある年、母が旅の土産に紙細工のちいさくて可憐なお雛さまを贈ってくれた。ああ...。申し訳なさと有難さとうれしさと心弾む感じと切なさと。そのお雛さまをことしも飾る。桃の花とともに、ではなく、なぜか咲き初めしカロライナ・ジャスミンとともに。
そんな3月3日は大恩人の結婚記念日でもあるのだが、ワタクシ的にはシベ少の舞台の日だった。いいのか? そんな桃の節句で。
紀伊国屋サザンシアター。舞台には二階建ての旅館。エレベーターがうまいことできていて、演出の土屋なんとかさんも気に入ってるのか頻繁に使っている。始まりはどうしようかと思ったものの(おっとこういうトーンが脆さが面白いと噂のシベ少なのかい?とね)、一度笑いが起きてからは、なめらかにどんどこすすむ。そうそう、私にとってシベ少は、初見です。どうも面白いらしい、と聞いてのチケット取り。売れてると聞いた割には、めっちゃいい席が取れたのが謎。チケット発売日からずいぶん経ったころに取ったのに、前から6列目よ? んが、非常に残念だったのは、隣の席の人が見るからに周りは関係ないしという視野狭窄くんで、ひじ掛け両方どーん、みたいな小柄な男だったこと。この人、笑うときは文字通りバカみたいに笑い、途中からは足を座席にあげて身を乗りだしていた。ああ迷惑。きしょくわるっ、である。
と、きしょく悪いああ気色悪いとぼやきつつ、そんな気色悪さもほぼ忘れるほど舞台に集中できる出来。入れ子式すれ違いの何重構造? 面と向かわない、向かえない、だからさらにすれ違い。そのすれ違いのパズルを立体的に見せていくところが、舞台ならではのおかしさ。照れ隠ししすぎな感覚が心地よい。これじゃあ伝わりにくいだろうなあと思いつつも、その距離感が心地よい。照れろ照れろ、我らは日本人じゃ。感情のすべてを出すなどもってのほかじゃい。ただし、切なさはなかった。ちょろちょろっと切ない感じをうまいこと笑いにしてほんの少しだけ入れ込んでも良かったのではと思わぬでもない。思わぬでもないが、それはどんな演出なりや? (同じことを描くにも見せ方は千差万別、そこにその人が表れる。土屋なにがしさんは照れて逃げたか? そこをこそ観たかったのだけど、逃げる、というのも一手か)
さて、私はゲームをしないのでついていけなかったという面もおおいにあるとは思うのですが、それでも最後のほうのゲームちっくな演出は、これぞシベ少、なのかな? 私にはちょっといらんかなあという感じでした。これまた大いなる照れ隠しなのでしょうが、もっと違う見せ方もあるのでは・・・?
そんなこんなの初シベ少舞台、何よりも役者さんたちが達者だなと思いました。代議士の息子役の人の挙動不審さ、ぎこちなさ。これ、元からなのかな? いやいや芝居よね? ヘンでおかしい。で、その父親役の先生。まあ達者なこと、達者なこと。しかも男前よ? かなりの男前よ? 仲居さん役の人は、声がかわいい。が、上記の最後のほうのゲームちっくな演出になると声のかわいさもキャラのアホピュアさも消えてしまったのが残念。ものすごく事態を把握してるやんっ!! おかみ役の人は、こっそり日舞なりダンスなりやって身体を鍛えはったほうがいいかもね☆ 板前さん役は、この人が発端で笑いが起こった"手だれ"的シベ少役者と見た。外ではどうかわからないけど、このサイズ内、演出家内では重宝な人なのでしょう。で、声が私的にダメだったのが、旅館のダンナ役の人。ダメだわ。この声、圧倒的にダメ。これはもうどうしようもない個人的嗜好ですな。ダメよダメ、隣のきっしょい客と同等くらいにあかんかった。でも割と劇団内では重鎮なのかもね。とフォローを忘れず☆
次もシベ少の公演を観たいかと問われれば、下北沢あたりでやるならば、と答えようと思う。もうちょっと小さい劇場でならと。この人たちは、きっと膝を抱えて観る感じが似合ってると思う。お尻が痛くなるような長いベンチという名の板の上に座って観る感じ。ま、そういうとこだと二階建ての舞台装置はムリなのでしょうけど。というより、そういうところからやってきて、ようやっと二階建ての装置をつくれるくらいの小屋でやれるようになったということなのでしょうけど。
満足度としては、ごく、"まあまあ"かな。シベリア少女鉄道の舞台を観た、という満足感。そこそこに面白くて笑わせてもらったよ、というそれなりの充足感。うん?と思ったり、もう飽きちゃったなぁとか退屈になってきたかもよ、とかっていう何分間かも断続的にあり。ゾワゾワしたり、なんじゃこりゃとぐるんぐるんなったりは、ありませんでした。良くも悪くも、5年前に観てもあまり感想は変わらなかったかも。
何より気になったのは、芝居が終わったあと、客がだれ一人拍手をしなかったことだ。冷たいなぁ。なんでなの? それがこの劇団に対するマナーなの?(まさかね) 終わりがわかりづらかった、というのもあるのかもしれないし(って言うほどわかりづらいわけじゃなかったのよ? 初見の私ですらエンドマークは見えたもの。なのに拍手が起こらないから、まだ何かあるのかなと思ったけど何もなかった。拍手したくねーよってほどヒドイ舞台では全くなかった)、カーテンコールで役者さんたちが出てきてから拍手しよう、って感じだったのかもしれないけれど、けれどけれどそれにしても拍手ゼロってさ・・・。
席を立つ前に、ワタクシ的ひとり拍手をしておきました(良いと思った分だけね)。