MAGNIFIQUE LIVE 大萩康司(G)ほか

ひょんなことから、若手アーティストの競演、
MGNIFIQUE LIVE(於・東京オペラシティ)に行く。

主眼は、クラシックギターの大萩康司。
最初に登場し、まずはソロ。

大萩康司のギターの音色には、よくわからないけれど、
温かみがあるなと感じる。
血が通ってる、というのか。
その分、ばらつきがあるような気もしますが。
奏者が疲れていたら、疲れた音になる、みたいな。
今日はきっと、お疲れモード。
というか、この企画自体、彼はそんなに乗り気じゃなかった?
などと、アルバムでしか聴いたことがない身で、
好き勝手なことを言ってみる。

彼の生での演奏を初めて観て聴いての感想は、
"こんなにエモーショナルな感じで弾くんだー"。
ちょっと意外でした。
でも音を聴いてるうちに、ちっとも意外じゃなくなりました。

彼には、何が見えているのだろう。(そりゃ楽譜だとは思いますがね)
弾きながら、彼は何を歌い、何を話しかけ、何を感じているのだろう。
そんなことを思いながら、時折、雲が通り過ぎたりもするらしい
日向っぽい音を聴いていました。

次に登場したのが、鍵富弦太郎というヴァイオリニスト。
この人のことはまったく知らず、演奏前に18歳と紹介されるの聞いて、
ちょっと身構える感じになる。
でも、なんか、心地よかったー。
キンキンした感じはゼロで、これみよがしもゼロで、
陶酔してる風でもなく、ごく自然に弾いてるみたいで。
いいな、と思いました。
これから先、60年はおそらく弾いていくなんて、なんて素敵なこと。

フルートの人は、私はパスで。

クラシックギターの村治奏一は、間違いなくいいですね。
ご存知、村治佳織の弟さんです。
これは無知ゆえの発言ですが、大萩康司の弾くギターが
温かさや素朴さ、血の通った脈打つ感じの音色だとすれば、
村治奏一の奏でる音は、ソリッドでクリアで洗練されている。
と私は思いました。
もちろんギター自体の違いもあるのでしょうけれど。
うん・・・でもやっぱり、洗練されている音だなと思う。
バランスがいいというか。
"大人"な感じというか。(実年齢は23歳だそうです)
たとえば彼のギターを聴いていて、直接エモーショナルになるって
ことはなさそうだけれど、ずっと深いところで何らかの揺り動かしを
受けいる感じがする、といえば伝わるでしょうか。
疲れない音。だけど、実はこっそりひっかかりのある音。そんな感じ。
好きかもしれない。
こんど、アルバムを聴いてみよう。

トロンボーンは女性でびっくり。
すごい肺活量だなー。
なんでトロンボーンをやろうと思ったのかなー。
生で、しかもオーケストラとかでちょろりとではなく
ソロでの演奏を聴いたのは、たぶん初めてだと思う。
特に低音が好き。
象みたいで、ほっとします。

そのあと、ピアノの人が登場。
ちょっと、微妙にパス。

という6人が3組に分かれ、デュオとソロを演奏するのが第一部。
第二部は、パーカッションを加えての全員でのラヴェルの「ボレロ」。
・・・って、これは無理があるでしょ!
バランス悪いよー。
「ボレロ」の良さが感じられないよー。
演奏が終わって、みんなは盛大に拍手してたけど、私は軽く拍手、
くらいの気持ち。

そしたら今日のコンサートがCDになるとかで(うそーッ! 買う? 買わね〜)、
それにはいまの演奏ではまずいのでもういちどやります、と再度「ボレロ」を。
2回目のほうがまだよかったけど、でもこの曲をこの編成で
やるってこと自体、ちょっと無理なんじゃないのかなぁ。
いくら新たなことへの挑戦といったって、曲と楽器のバランスがうまくないと思う。
もっと曲の良さ、この人たちの良さを引き出す選曲もあったでしょうに。。。
2度目も盛大な拍手が起きていたし、しかもかなり長く続いていたので
(レコーディングしてると聞いてのおつきあいもあるのでしょうが)、
この「ボレロ」も良し、なのでしょうか。
自分の好みしかわからない門外漢には、よくわかりしぇん。


とはいえ、日頃あまり親しんでいない方面のコンサート、
それだけで充分楽しませてもらいました。
初めて行ったホールだったので、きれいだなあと思ったり、
このパイプオルガンを聴いてみたいなあとも思ったり。

何より、同じクラシックギターでもこんなに音が違うんだ
ということは、私にはいい発見でした。

ギタリスト二人とヴァイオリニストは、もっと他の曲を聴いたり、
演奏を聴きに行ったりしたいなと思います。
その先で、また別の奏者とのいい出会いがあるような予感がします。